2005年12月02日
「真実の瞬間」と「ブランド」
迂闊に「ブランド」という言葉を使用しないようにスタッフに言い聞かせている。人によって捉え方がまちまちで非常に誤解されやすい言葉であるからだ。
ところで、当本社ビル(スクエアタワー)のビル管理会社は非常によい会社であることはうわさで聞いていた。会社案内にも目を通したことがある。しかし、それではすばらしさが実感できなかった。
最近興味深いエピソードがあった。管理会社からビル全館向け放送があった。内容は、あるフロアーで急病人が出たらしく、救急車を手配したので、6機あるエレベータの一台を一時使用禁止するという放送だった。ちょうど一階ロビーのタリーズ(コーヒー屋)にいた。担架を持ち込む救急隊員が通り過ぎた。それから15分後、また、ビル全館向け放送があった。無事終了したので、使用禁止されたエレベータを通常使用に戻すとのこと。
このエピソードは、まさに「真実の瞬間」というに相応しい出来事であった。僕は明らかにこのビル管理会社は決め細やかなすばらしいサービスをしていることを実感した。また次の瞬間、信頼という「ブランド」を感じた。
何が言いたいのかというと、Webのリニューアルだけで「ブランド」が形成されるわけではなく、ユーザがそこに何らかのブランドを認識するためには、「事実」に基づく「エピソード」が必要なのではないだろうか? その「エピソード」の連続体のなかであるきっかけによって、「真実の瞬間」を捉え、その延長線で何らかの「ブランド(焼印)」が心に刻み込まれる可能性が高い。
ブランド形成は時間と努力が必要だと思う。Webによるブランド形成を考えているのであればリニューアルも大切だがその後の「運用」にこそ、重点をおくべきであろう。そして、上記のようなものも「ブランド」形成のひとつの手法だとした場合、現在、Webを取り巻く環境は、ツールといい、技術といいすばらしい環境が整っていることも確かだ。