2005年06月29日
法と実態 --子どもは誰のものか?
現在、株式会社の特質を機能的にみると、1.出資者による所有、2.法人格の具備、3.出資者の有限責任、4.出資者と業務執行者の分離、5.出資持分の譲渡性、となる(会社法-弘文堂、神田秀樹著)。
日本の会社法は、ドイツのヘルマン・レースラーが起草した案をもとに旧商法(明治23年)にはじめて設けられた。その後数回改正を重ねたが、戦後には、アメリカの制度を大幅に受け入れる形になる。昭和25年の改正の取締役会制度導入、株主権の強化・・・等からはじまり現在まで15回前後改正されている。ドイツ法系の立法として出発した日本の会社法は、戦後アメリカの影響を受け変容し、日本独自の色彩が加味された形なのだ。
最近の動きを見ると、監査制度の強化が目立つとともに、経済の活性化のためか、出資を促すよう手続きの簡素化、制度の多様化が目立つ。
法的には会社は出資者による所有といわれるが、株主は、主に利益配当請求権、残余財産分配請求権、株主総会の議決権があるが、案外権利項目が少ない。また、株主の義務は引受価格を限度とする出資義務以外に何も存在しない。
一方、業務を執行する取締役は強大な権限を持つが、同時に義務や責任が重く、善管注意義務や忠実義務を負い、取締役の会社に対する弁済責任、損害賠償責任についての規定が設けられていてなかなか厳しい内容。
改正の流れをみると、経済や社会のバランスを調整するかのように、足りない部分を補完し、行き過ぎた部分を是正しているように思う。これからも会社法は社会のバランス維持のために改正されつづけるだろう。
会社は誰のものか? いろいろ語られているが、すべての人を納得させる回答を導きだすことができないようだ。少しサイズを落とし、自分の家族に置き換えてみると実態が見えてきて面白い。「子どもは誰のものか?」あるいは、「家庭は誰のものか?」を考えるなかに、難解を紐解くヒントが存在するのではなかろうか?