2005年01月08日
新しいマーケティング定義の解釈に関して
米国マーケティング協会(AMA)は昨年の秋ごろ、マーケティングの「定義」を改訂したという事実を、友達を通して聞いた。internet.comにて解説を発見。それによると、
「マーケティングとは、組織とステークホルダー(関与者)両者にとって有益となるよう、顧客に向けて「価値」を創造・伝達・提供したり、顧客との関係性を構築したりするための、組織的な働きとその一連の過程である。(翻訳:鶴本氏)」
元の情報はAMAが提供しているmarketingpower.com内にあった。
「Marketing is an organizational function and a set of processes for creating, communicating and delivering value to customers and for managing customer relationships in ways that benefit the organization and its stakeholders.」
ところで、19年振りの改訂といわれるが、どこがどのように変わったのだろうか? と思い、以前の定義を探すと1985年度版を発見。
http://www.lboro.ac.uk/departments/bs/research/2000-4.pdf
それによると、
“Marketing is the process of planning and executing the conception, pricing, promotion and distribution of ideas, goods and services to create exchanges that satisfy individual and organizational objectives.”
マーケティングとは、個人と組織の目的を満足させる交換を創造するために、アイデア・商品・サービスについての、概念形成・価格設定・プロモーション・流通を、計画し実施する過程である。
場違いではあるが、自分なりに納得してみようと思い分析してみた。すると意外なことを発見した。
1985年度版
目的 : 組織(企業)と個人(顧客)相互の満足の創造
スコープ : アイデア・商品・サービス
アクション: 4P(製品・価格・プロモーション・流通=「マーケティング・ミックス」)の最適化
2004年度版
目的 : 組織とステークホルダーの利益
スコープ : 組織的な機能(function)・プロセス(processes)
アクション: 顧客価値の創造・コミュニケーション・顧客関係性管理(CRM)
大胆だが、僕が分析するとこのようになってしまう。
確かに、マス中心のマーケティングから、「個」中心のマーケティングの流れはみえてくるものの、もうひとつ大きな違いがあるように思う。
それは、マーケティングの範囲とミッションの広がりである。
1. 組織(企業)と個人(顧客)という2者間の関係性が、新定義では、企業に取巻くstakeholders(ステークホルダー=顧客、株主、従業員、取引先、地域住民、求職者、投資家、金融機関、政府・・・等)と非常に広い範囲を指している。
2.組織が作り出す商品やサービス等企業活動の一部を指していたが、新定義では、組織の機能・プロセス等企業活動一連の活動を指しているということ。
3.4Pという売り方の最適化であったものが、新定義は、売ったあとの顧客満足(価値)や顧客関係性管理(CRM)等、持続可能な関係性を指していること。
このように米国マーケティング協会(AMA)の新定義は、国連のグローバルコンパクトやISO(国際標準化機構)が推進する、「持続可能性社会の実現」や「企業の社会的責任(CSR)」等の世界的な動きに呼応する形で改訂されたのではないかという見方だ。
ベテランのマーケティング担当にしてみれば、「売り方」でいいじゃないか!と嘆きの声が聞こえてきそうだが、米国マーケティング協会(AMA)は国際的にも影響力が強い。これが世界の動きだと受け入れて新たな一歩を踏み出すことになるだろう。
明らかに、世界はひとつ共通の価値観をもって新たなルールつくりをしようとしている。少なくても僕はその鼓動を感じないわけにはいかない。このように感じるのは僕だけだろうか?